×

会員ログイン

ログイン名
パスワード

A.C.P.C.提携講座 講義録

A.C.P.C.提携講座 産業概論から実務的なビジネス論まで幅広いテーマの講義を展開
8K:VR

ライブエンタテインメント論東京工科大学実施

2017年10月7日

提携講座4回目は (株)NHKエンタープライズ 事業開発センター イベント・映像展開 エグゼクティブ・プロデューサーの田邊浩介さんを迎えました。
講義は、田邊さんが取り組んでいる「8K:VRプロジェクト」から、これまでの作品8K:VRシアター「Aoi -碧- サカナクション」と8K:VRライド「東京VICTORY」(サザンオールスターズ)について。その制作コンセプトから演出プラン、撮影方法、ポスプロなど詳しい説明があり、学生たちはVR(ヴァーチャルリアリティ)による映像・音響技術の最先端を学び、驚きと感激を共有した講義となりました。

8K:VRシアター「Aoi -碧- サカナクション」

田邊浩介さんは学生時代から忌野清志郎さんのファンで、忌野清志郎さんが校長を務めた「ロックの学園」(三浦半島の廃校・旧神奈川県立三崎高校が会場)というロックイベントを企画し、プロデュースしていたこともあります。

「忌野清志郎さんが大好きだったので、校長先生になって欲しいとオファーしたら快諾してもらいました。このプロジェクトをきっかけに音楽の人脈ができて、サカナクションとの出会いもこのイベントでした」と話し、学生たちはまず田邊さんがロックファンであることの一面を知ります。

その後、スクリーンには誰もが見覚えのあるNHKのマスコット「どーもくん」の8Kアニメーション作品や、海外フェスでの「DJ Domo」の映像が流れました。学生たちはこれらの作品も田邊さんの仕事と知り、様々な分野で企画・演出・プロデュースをし、ライブ・エンタテインメントのど真ん中で活躍していることを再認識することになります。そして講義は本題に入ります。

田邊さんは学生に向かって「ヴァーチャルリアリティを体験したことある人?」と質問しますが、これが意外に数少ない挙手でした。ただ、学生たちも、2016年8月からBSで試験放送している「8Kスーパーハイビジョン」のことは知っていたようです。続いて田邊さんは「大型映像に興味を持ったきっかけは、30年前にディズニーランドで体験したマイケル・ジャクソン主演の『キャプテンEO』(*)でした。3Dの立体映像にドキドキし、アーティストの世界観にどっぷりとハマり、自分もこのような映像を作りたいと思うようになりました」と、現在の仕事に就いたきっかけを話しました。
(*製作総指揮ジョージ・ルーカス、監督フランシス・フォード・コッポラ。ストーリーは色彩を全く失った暗黒の星へとたどり着いたキャプテンEOと仲間たちが、歌やダンスなどで暗黒の女王に挑む)

田邊さんは「8K:VRシアターは、最先端の高精細映像・音響技術を活用したシアター型VRです。立体映像(8K3D)+立体音響(22.2ch)+空間演出(レーザー照明)を組み合わせることで、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使わずに、その場にいないはずのサカナクションが目の前で演奏し、ライブハウスのような迫力のサウンドに包まれるというメディア体験が可能になります。また、VRの演出手法は世界でもまだ確立されていません。これまでの映像の文法だったフレーミングや編集の概念はVRでは通用しないんです」と、8K:VRの解説を始めました。

基本情報として、4K(3,840×2,160)、8K(7,680×4,320)と解像度の違いを紹介しました。「4K、8Kの「K」はキロ(=1,000)で、それぞれ「4,000」「8,000」を表します。4Kテレビの解像度はフルHDの解像度(1,920×1,080ピクセル)の縦2倍・横2倍で、横が約4,000となることから「4K」と呼ばれます。同様に「8K」はフルHDの縦4倍・横4倍の「7,680×4,320ピクセル」で、「8K」と呼びます。つまり、8K映像では、フルHDの16倍の密度で画素が並び、フレームレートもフルHDの倍の60p。膨大な情報量の映像メディアなんです」。

次のテーマは「Aoi -碧- サカナクション」の制作フローについて。まず、田邊さんの細密な絵コンテがスクリーンに映し出され、プリビズ、そしてNHKメディアテクノロジーが開発した立体設計アプリの説明があり、更に3D撮影についての説明がありました。

「3D撮影は、2台の8Kカメラを右目と左目の幅と同じ6.5cm間隔に設置した、特殊なカメラで収録します。サカナクションのメンバーの3D撮影では、直径5.4mの回転ステージをスタジオに持ち込みました。ステージの上にライブ機材をフルセットして、本番さながらに演奏するメンバーを180度回転させて、クロマキー収録しました」と解説しました。

「背景となる観客の実写素材は、大阪城ホールで行われたサカナクションのライブでステージの上から3D撮影させてもらいました。山口一郎さんはじめメンバーとスタッフのみなさんに協力いただき、ようやく実現したショットです。この観客の実写素材と、先に撮影したサカナクションのクロマキー素材を合成し、クライマックスの演奏シーンが完成しました。全体の制作日数は3ヶ月弱でした。この作品にサカナクションを起用したのは、やはり先進的な表現や技法を積極的に取り入れているアーティストということがあります。運良くスケジュールが調整つき、出演を快諾してもらいました」

スクリーンには、「Aoi -碧- サカナクション」(*)が映し出され、学生たちは実空間と映像の融合という8K:VRの圧倒的なリアリティを垣間みることができました。誰もが真剣な表情のまま映像に見入っていました。

(*「2016年度グッドデザイン賞」「Innovative Technologies 2016選考委員特別賞」「ルミエール・ジャパン・アワード2016 3D部門グランプリ」受賞)

また、この作品は2016年3月にアメリカ・テキサス州オースティンで行われた音楽、映画、インタラクティブの3部門で構成される展示会「SXSW2016」のVR/AR部門に出展されました。

その時のことを田邊さんは「この展示会には、世界中からクリエイターや投資家が集まります。実際に体験した方々からとても多くの反響がありました。なかでもクリエイターたちからの反応が良かったのですが、特に興味深かったのは ”Shared Experience” という言葉でした。つまり、驚きや感動の体験を共有できる新しいVRだ、と評価されたんです」と話しました。

講師 田邊浩介さん

(株)NHKエンタープライズ グローバル事業本部 事業開発センター イベント・映像展開 エグゼクティブ・プロデューサー

プロフィールの詳細

※肩書きは講義当時のものです

ページトップ

Copyright©ACPC. All rights reserved.