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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 4

松尾健司さん
Interviewee

REC.010 松尾健司さん

J-WAVE編成局局次長兼編成部長

プロフィールの詳細


CHAPTER.1
好きなことは深堀りする!

― 今日の講義は「未来のラジオ放送」というテーマで、ラジオ番組がどのようにつくられているのか、ラジオ番組の価値などをプロデューサーという立場からお話されましたが、学生の印象はいかがでしたか?

松尾健司さん(以下、松尾と敬称略):ノートをとるようにパソコンに打ち込みながら熱心に聞いている学生が多かったですね。

― 学生たちが視野を広げるにはどのようなことが必要でしょうか?

松尾:好きなことは誰よりも深く掘り起こしてみることが大切。また、知らないことは放ったらかしにしないで、そのときにすぐ調べることです。つまり、知らないことを知ることで幅を広げ、好きなことを掘り下げると一つの大きなピラミッドみたいになっていきます。
僕が音楽を深堀りするきっかけになったのは、高校生のときに聴いたはっぴいえんど(※1)です。メンバーの系譜を調べていくうちに、興味がどんどん広がりました。細野晴臣さんがYMOに至るまでのレコーディングのプレーヤー、大瀧詠一さんのナイアガラサウンドに関係性のある山下達郎さん、シュガーベイヴを聴くようになりました。
同時に、知らないことは知りたいから、日本で発売されていないようなジャンルのレコードを海外から取り寄せ、ジャズであればブルーノートの名盤と呼ばれるようなのは一通り、マイス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンのレコードをひたすら買っていましたよ。何かにとことんのめり込めるのは大学生のときだと思うんですよね。だから社会に出てジャンプするために大学生のときにたくさん吸収して欲しいです。

※1はっぴいえんど(1969年細野晴臣、松本隆、大瀧詠一、鈴木茂によって結成され、71年に発売されてアルバム『風街ロマン』など、ロックに意図して日本語の詞をのせたその音楽性は日本のロックシーンにおいて半世紀が過ぎた今でも高く評価されている。72年解散)

― 深堀りというのは、好きだからこその独自の研究ですよね。ラジオの仕事をするようになってからはいかがですか?

松尾:大学生のときにFM横浜で仕事をするようになり、白井貴子さんと柳ジョージさんの番組を担当することになったんです。学生がキューを振って、その人たちの番組をつくるなんて相当勉強しなきゃいけないですよね。でも、まだ駆け出しですから、レコード会社からサンプル盤をもらえないし、当時は収入の半分がレコード代に消えていきました。白井さんはUKロックやアメリカのロックも詳しくて、柳さんはソウル、ブルースです。ラジオは番組ごとにそれぞれ好みの音楽分野のコンセプトがあるから、僕にとっては番組が自分の師匠みたいになるんです。
柳さんの番組ではオーティス・レディング、マーヴィン・ゲイ、サム・クックを深堀りして、一方で「ジョージさん、このアレクサンダー・オニールは」とか言って新譜をどんどん買って来て渡していました。ミュージシャンは刺激が欲しいので「これよかったよ」、「松尾君、もっといいのある?」。と、信頼されていくんです。深堀りすると応用がきくんですね。深くいくためには、穴も大きくしないといけないから、ちっちゃい穴のつもりだったんだけど、そのうち街中を掘り起こすような感じになってしまう(笑)。だから、あれもこれもやらない方がいいと思うんですよね。

― ところでラジオのプロデューサーの仕事は、どのように評価されるのですか?

松尾:ラジオプロデューサーは三つの評価があります。一つはレーティング(聴取率)でファンに愛されているという評価。二つ目は雑誌に出るとか、他のメディアに取り上げられるようなことをやっているかどうかという話題性。三つ目はスポンサーがつくか。つまり売れる企画をつくれるかです。

― 講義の中盤で企画書の重要性をお話になりましたが、学生たちは真剣に聞いていました。

松尾:ラジオ番組のプロデューサーに求められるのは「世の中の問題を探し、解決策=企画を生み出す能力」なので、企画書を書ける人はどんな現場でも重宝がられます。企画書を書く上で「常識にとらわれない逆転の発想」、「既存のものをカスタマイズしてみる」、また「反対の角度から考えてみる」など、誰でも最初から書けるものではないので、学生の頃から積み重ねて欲しいですね。

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